クリニックのチラシとWeb広告はどっち?4軸で決める判断フローとCPA試算

結論:チラシかWeb広告かは「診療科×診療圏の年齢構成×開業フェーズ×月間予算」の4軸で決まる

クリニックの広告媒体選択フローチャート図解。診療科、診療圏の年齢構成、開業フェーズ、月間予算の4つの判断軸を上から順に分岐させ、チラシ優先/Web広告優先/併用の3つの結論に到達する構成。青と白を基調とした清潔感のあるインフォグラフィック

限られた予算でチラシとWeb広告どちらに出すかを決めるためには、結論から言えば、優先チャネルは次の4軸を上から順に当てはめれば数分で見当がつきます。

1. 診療科

小児科・内科・整形外科のように来院頻度が高く生活圏で選ばれる診療科は、面で認知を取るチラシが効きやすい傾向があります。一方、皮膚科・眼科・心療内科や自由診療系は「症状名で検索してから探す」行動が起点になるため、検索連動型のWeb広告と相性が良いのです。

2. 診療圏の年齢構成

半径1〜2kmの人口、65歳以上比率、競合クリニックの密度を国勢調査や自治体の町丁別統計で確認します。高齢化率が高いほど紙媒体の相対的な価値は上がりますが、実際には70代前半までスマホ検索が浸透しているため、「高齢者が多いから紙」と短絡させず数値で確認する姿勢が重要です。

3. 開業フェーズ

開業前〜直後は存在自体が知られていないため面でのチラシ告知に重心を置きます。
開業後はWeb広告で潜在層へのリーチや顕在層の刈り取り、認知度が高まってきたら指名検索と再来促進へ配分をずらしていくのが基本形です。

4. 月間予算

目安として、月10〜30万円台なら分散させず1チャネルに集中させたほうが検証可能なデータが残ります。30〜100万円になると併用の設計余地が生まれ、Web広告で刈り取りつつチラシで面の認知を補うという組み合わせが機能し始めます。

なお本記事で示す新患獲得単価や反応率はモデル試算であり、立地・競合状況によって変動します。効果を保証するものではなく、あくまで自院の数値を測るための仮説としてお使いください。

月10万円を同額投下したら何人来るか:到達数・反応率・新患獲得単価(CPA)のモデル試算

同じ月10万円をチラシとWeb広告に投下した場合の比較表の図解。到達数、反応率、問い合わせ数、来院率、新患数、新患獲得単価(CPA)の6項目を2列で並べたモデル試算表。青と白で作られた見やすいインフォグラフィック

「チラシとWeb、どちらが安く新患が取れるのか」——ここでは同じ月10万円を両媒体に投下した場合をモデル試算し、比較の型をお示しします。

折込チラシ

A4片面カラーの印刷が1枚2〜4円、新聞折込料金が1枚3〜4円前後ですので、合計6〜8円と見ると10万円で約1.2万〜1.6万枚。折込の反応率(問い合わせ・来院につながる率)は一般に0.01〜0.1%程度とされ、仮に1.4万枚×0.05%=7件の反応、そのうち8割が実際に来院すれば新患は約5〜6人。CPAは10万円÷5.6人で約1.8万円です。

ポスティングは配布単価が1枚5〜7円と折込より高くなりがちですが、新聞を取っていない世帯にも届き、丁目単位でエリアを絞れる点が強みです。到達数は減っても診療圏の密度を上げられるため、反応率が折込を上回るケースもあります。

リスティング広告

「地域名+診療科」の検索クリック単価は200〜500円程度が目安で、10万円なら約200〜500クリック。ランディングページから予約・電話に至る転換率を3〜5%とすると問い合わせは10〜20件、来院率8割で新患8〜16人。CPAは6,000〜1.2万円台に収まる計算です。Googleマップ(ローカル検索)経由は来院意欲がさらに高く、CPAが下がる傾向があります。

比較計算式

チラシとWeb広告の計算式はどちらも共通です。下記3つに自院の実数を入れるだけで比較できます。

  • 到達数×反応率=問い合わせ数
  • 問い合わせ数×来院率=新患数
  • 広告費÷新患数=CPA

ただしCPAだけで決めないでください。慢性疾患等で再診が続く診療科なら1人あたりの生涯診療単価は数万円以上になり、CPA2万円でも数か月で回収できます。逆に単発受診中心ならCPAの許容幅は狭くなります。

試算の前提となるのは受付が把握できる数字です。今月の予約件数、電話件数、初診数、そして「何を見て来られましたか」の記録。これらが揃えば、来月の配分は感覚ではなく計算で決められます。

表現の自由度と効果測定で差がつく:医療広告ガイドラインの扱い、チラシ→検索→予約の導線、測定手順と失敗回避

「どちらが効いたのか分からない」——と判断に悩まれることがあるかと思います。しかし、媒体選択の本当の差は、書ける情報量と測れる仕組みにあります。

まず押さえたいのが医療広告ガイドラインにおける、限定解除の扱いです。自由診療の費用やリスク、詳細な治療内容などを記載できる限定解除は、患者が自ら情報を求めて閲覧するWebサイトには適用されますが、一方的に届くチラシには原則適用されません。

つまりチラシは書ける情報が構造的に少なく、体験談やビフォーアフター、他院との比較優良、「最高」「No.1」といった最上級表現は避ける前提で設計する必要があります。だからこそ、チラシは診療科目・診療時間・院長略歴・アクセスといった事実情報に絞り、詳細はWeb側で補う役割分担が現実的です。

この分担を成立させるのがクロスメディア導線です。チラシで認知を取り、院名や症状で検索させ、ホームページから予約に至る流れを最初から想定します。チラシにはQRコードを載せ、遷移先は汎用トップではなく配布エリアや症状に合わせた専用ページにしておくと、情報不足による離脱を防げます。

測定は次の4点を用意してください。

  • 問診票に「当院を知ったきっかけ」の選択欄を追加する
  • チラシごとに専用QRコードと専用電話番号を割り当てる
  • GA4で参照元別の予約完了数を確認する
  • 指名検索数とGoogleビジネスプロフィールの閲覧数の推移を見る

月次では媒体別の新患数と広告費、割り算した新患獲得単価を一枚にまとめ、翌月の配分を決めます。この一枚があるだけで、感覚論から抜け出せます。

失敗の型もほぼ決まっています。

  • 花粉症や健診の需要期からずれた配布
  • 指名検索の刈り取りに偏ったキーワード設定
  • 情報が薄いままの着地ページ
  • 制作費・配布費・運用手数料の内訳を確認しない発注

見積もりは必ず項目別に分解して受け取り、どこに何を払っているかを把握しておいてください。

まとめ:来月の広告費をどう配分し、何をKPIに置くか

最後に、判断を来月の出稿に落とし込む手順を整理します。

判断軸は4つでした。下記を順に当てはめれば、自院のタイプが見えてきます。

①診療圏の年齢構成(65歳以上が3割を超えるなら紙の比重を上げる)
②開業フェーズ(認知ゼロの立ち上げ期は紙で面を取る)
③診療科の検索行動(症状を自分で調べて選ぶ科目はWebが強い)
④予算規模(月30万円未満なら分散させず一方に集中)

タイプ別の配分目安としては、下記の通りです。

  • 新規開業直後は、紙7:Web3で内覧会と初期認知に振る
  • 地域密着の一般内科・整形外科などは、Web広告よりチラシ主体で紙6:Web4
  • 美容・自由診療や専門外来のように検索起点で選ばれる領域は、Web8:紙2

複数院を運営している場合は法人全体で一律にせず、駅前と住宅地でエリアごとに配分を変えてください。同じ法人でも診療圏特性が違えば正解は変わります。

来月決めるべきことは3つに絞れます。

①配分比率
②2つ目は測定方法(受付での来院経路アンケートと媒体ごとの専用QRコード・専用電話番号)
③許容できる新患獲得単価(CPA)の上限

CPAの上限は、その患者が生涯にもたらす来院回数と単価から逆算します。再診が続く科目ならCPA1万円台でも十分に採算が合う一方、単発受診が中心なら数千円が限界という判断になります。

検証の単位は3か月です。1か月では季節要因とノイズで判断を誤ります。3か月ごとにCPAとLTVを突き合わせ、上限を超えた媒体は縮小、下回った媒体は増額する。この組み替えを続けるだけで、広告費の精度は着実に上がります。

自院データを見ても判断が付かない場合は、医療広告ガイドラインの運用実務に精通した担当者に、来院経路データと売上構成を持ち込んで相談するのが最短です。表現規制と媒体特性を同時に見られる相手でなければ、判断は前に進みません。必要に応じて外部の専門家などにご相談することをオススメします。

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